なんだか理由もないのに、心がモヤモヤする…。
もっと肩の力を抜いて、穏やかな気持ちで毎日を過ごせたらいいのに。
この記事では、今から2000年以上も昔に生まれた、二つの「心の処方箋」についてお話しします。
それは、「エピクロス主義」と「ストア派」という考え方です。
「哲学なんて、なんだか難しそう…」
そう感じたかもしれませんが、心配はいりませんよ。
難しい言葉は一つも使いません。
この記事でお伝えしたいのは、二つの考え方の「違い」と、あなたの毎日をふっと軽くするための「いいとこ取り」のコツだけ。
読み終える頃には、仕事や人間関係のストレスからあなたの心を守る、具体的でやさしいヒントがきっと見つかっているはずです。
一緒に、あなただけの「お守り」になるような、古代の知恵を探しに行きましょう。
【超入門】心の平穏を求めるエピクロス主義と、強さを求めるストア派
これからお話しする「エピクロス主義」と「ストア派」は、今から2000年以上も前の、ずっと昔に生まれた考え方です。
それは、いわば
「人生を、どうすればもっと楽に、穏やかに生きられるんだろう?」
という、昔の人々の真剣な悩みへの、一つの答えのようなものなんです。
なんだか、今の私たちとあまり変わらない悩みですよね。
難しく考えずに、「へぇ、そんな考え方があるんだな」ぐらいの気持ちで読み進めていってくださいね。
エピクロス主義「快楽」は誤解?穏やかな毎日こそが最高の幸せ
「エピクロス主義」と聞くと、「快楽主義」という言葉が思い浮かぶかもしれません。
なんだか、美味しいものを好きなだけ食べて、欲しいものを全部手に入れて
…というような、欲望のままに生きるイメージを持ってしまう方もいるかもしれませんね。
でも実は、エピクロスが目指した「快楽」は、私たちがイメージするものとは、少し違うみたいなんです。
彼が一番大切にしたのは、派手で刺激的な喜びではなく、「心がかき乱されない、穏やかで平穏な状態」でした。
これを「アタラクシア」と呼んだりします。
エピクロスは、後から不安になったり、後悔したりするような楽しみは、本当の幸せではないと考えたのです。
例えば、暴飲暴食をして、その時は楽しくても、後でお腹が痛くなったり、健康を損ねたりしたら、それは苦しみにつながってしまいますよね。
彼が本当に求めた「快楽」とは、気の合う友人と静かにおしゃべりをしたり、健康でいることのありがたさを感じたり、美しい景色をただぼーっと眺めたり…。
そんな、じんわりと心に広がるような、穏やかな喜びのこと。
刺激を追い求めるのではなく、日常の中にある「小さな安心感」や「穏やかな喜び」を大切にすること。
それが、エピクロス主義の本当の姿なんです。
なんだか、とても優しくて、素敵な考え方だと思いませんか。
ストア派 運命は変えられない?「動じない心」で悩みを受け流す
もう一つの「ストア派」は、エピクロス主義とはまた違ったアプローチで、心の平穏を目指す考え方です。
彼らが目指したのは、どんな運命や困難があなたの身にふりかかっても、感情的に振り回されることのない、「理性的で、動じない強い心」を持つことでした。
これを「アパテイア」と呼んだりします。
ストア派の教えの中で、特に覚えておいてほしい、とても大切な考え方があるんです。
それは、「自分にコントロールできること」と「自分ではどうにもならないこと」を、はっきりと区別すること。
私たちはつい、自分ではどうにもならないことまで、何とかしようともがいて、苦しくなってしまうことがあります。
例えば、上司の機嫌が悪いこと、電車が遅れてしまうこと、過去にしてしまった失敗、誰かが自分のことをどう思うか…。
これらは全部、残念ながら「自分ではどうにもならないこと」ですよね。
ストア派は、こうした変えられないことで悩むのは、とてももったいないことだと考えました。
それよりも、自分にコントロールできること、つまり、その出来事に対する「自分の受け止め方」や「自分の行動」に意識を集中させることが大切だと説いたのです。
上司の機嫌が悪くても、「そういう日もあるんだな」と受け流し、自分は自分の仕事に集中する。
電車が遅れたら、イライラする代わりに「本を読む時間ができたな」と考えてみる。
どうにもならないことは「そういうものだ」と静かに受け入れて、自分にできることだけに集中する。
そうすることで、
感情の大きな波に揺さぶられない、穏やかで強い心を育てていく。
それが、ストア派の知恵なんです。
なんだか、とても心強いお守りになりそうだと思いませんか。
【本題】エピクロス主義とストア派の「いいとこ取り」で楽に生きる3つのコツ
ここまでで、二つの哲学の違いが、なんとなく分かってきたのではないでしょうか。
穏やかで優しいエピクロス主義と、強くて頼りになるストア派。
ここからが、この記事であなたに一番お伝えしたい、大切な部分です。
それは、「どちらか一方を選ぶ必要はない」ということ。
まるで道具箱から、その時に必要な道具を取り出すように、場面に応じて二つの考え方を上手に使い分けてみる。
この「いいとこ取り」ができるようになると、きっとあなたの心はふっと軽くなり、もっと楽に生きられるようになるはずです。
具体的な「3つのコツ」を、一緒に見ていきましょうか。
コツ① プライベートは「エピクロス主義」で。心を満たす小さな幸せの見つけ方
まずは、仕事ややるべきことから解放された、あなたのための時間。
プライベートな時間は、ぜひエピクロス主義の考え方で、「穏やかな快楽」を見つける練習をしてみてください。
仕事が終わった後、ゆっくりできる休日、何でもない一日のふとした瞬間…。
そんな時に、自分の心をじんわりと満たしてくれる、小さな幸せに意識を向けてみるんです。
「そんなこと言われても、特別なことなんてないし…」
なんて、思うかもしれませんね。
でも、本当に、ごくごく些細なことでいいんですよ。
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朝起きたら、窓を開けて5秒だけ、外の空気を吸ってみる。
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いつものコーヒーや紅茶を、一口だけ、いつもよりゆっくり味わってみる。
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好きな音楽を、家事をしながらではなく、ソファに座って1曲だけ、耳を澄ませて聴いてみる。
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お風呂上がりに、冷たいお水を一杯、ごくごくと丁寧に飲んでみる。
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寝る前に、今日あった「ちょっと嬉しかったこと」や「ホッとしたこと」を、一つだけ思い出してみる。
「え、本当にこんなことでいいの?」と思うような、小さなことで大丈夫。
大切なのは、その瞬間の「あぁ、心地いいな」「なんだか、安心するな」という感覚に、あなたの意識をそっと向けてあげることです。
この小さな「快」の積み重ねが、まるで貯金のように、あなたの心の土台を少しずつ、でも確実に満たしていってくれます。
まずは、あなたを優しく満たすことから、始めてみませんか。
今度は、少し心がザワザワするような場面で、あなたを守ってくれる考え方です。
コツ② 仕事の悩みは「ストア派」で。「変えられないこと」から心を守る方法
プライベートな時間をエピクロス主義で優しく満たしたら、今度は少しタフな場面での心の守り方です。
仕事のプレッシャーや、職場の人間関係、理不尽だと感じること…。
生きていれば、自分ではどうにもならない困難に、どうしても直面してしまいますよね。
そんな時、ストア派の考え方が、あなたの心をすり減らさないための、心強い「盾」になってくれるはずです。
思い出してみてください。
ストア派の知恵の核心は、「自分にコントロールできること」と「自分ではどうにもならないこと」を区別することでしたね。
これを、あなたの悩みに応用してみましょう。
1.まずは、書き出してみる
今、あなたの心をモヤモヤさせている悩みを、具体的な言葉にして、紙やノートに書き出してみてください。
どんな小さなことでも大丈夫です。
2.次に、仕分けてみる
書き出したものを見ながら、線を引いて二つに分けてみましょう。
一つは「自分では変えられないこと」。
例えば、上司の機嫌、会社の決定、過去の失敗、他人の評価などです。
もう一つは「自分にできること」。
例えば、自分の受け止め方を変える、次の仕事の準備をする、誰かに相談してみる、といったことです。
3.最後に、意識を集中する
仕分けができたら、「自分にできること」は何かを考え、そこにだけ、あなたの貴重なエネルギーを注いであげてください。
そして、「変えられないこと」については、
「これは私の課題ではないな」
「考えても仕方ないことだな」
と、心の中でそっと手放す練習をしてみるんです。
この方法は、ごちゃごちゃになった悩みの正体をはっきりとさせて、あなたが本当に力を注ぐべき場所を教えてくれる、「心の整理術」のようなものです。
あなたは、全てを一人で背負う必要なんて、全くないんですよ。
変えられないことは、川の流れのように受け流してしまう。
そして、自分にできることだけに、静かに集中する。
このストア派の知恵が、あなたを不要な心の疲れから、きっと守ってくれます。
三つ目のコツ、人間関係についてです。
ここは二つの考え方を組み合わせることで、ぐっと心が楽になるポイントですよ。
コツ③ 人間関係は合わせ技で。疲れない「心地よい距離感」を保つヒント
さて、最後のコツは、多くの人が悩む「人間関係」についてです。
ここは一筋縄ではいかないからこそ、エピクロス主義とストア派の「合わせ技」が、とても役に立ってくれるんです。
人間関係でどっと疲れてしまう原因の多くは、「人との距離感」を見誤ってしまうことにあるのかもしれません。
誰にでも同じように接しようとしたり、苦手な人にまで好かれようとしたりして、心がすり減ってしまう…。
そんな時に、この二つの哲学を、あなたの心の引き出しに入れておいてください。
基本のスタンスは「エピクロス主義」で(守りの姿勢)
まず、心のお守りにしてほしいのは、「無理して、すべての人と仲良くする必要はない」というエピクロス主義の考え方です。
あなたの時間は、とても貴重です。
あなたの心も、とても大切です。
それを、わざわざ気の合わない人や、一緒にいて疲れる人のために、使う必要はありません。
苦手だな、と感じる人とは、物理的にも、心理的にも、そっと距離を置く。
エピクロスさんの言う「隠れて生きよ」の精神で、まずはあなたの心の平穏を、何よりも優先してあげてください。
社会的な場面では「ストア派」で(公の姿勢)
そうは言っても、どうしても関わらなければならない相手もいますよね。
職場の苦手な同僚や上司などが、そうかもしれません。
そんな時は、ストア派の出番です。
心の中で、そっとスイッチを切り替えるんです。
「これはプライベートではなく、社会的な役割だ」と。
感情を挟まず、ストア派のように、自分のやるべきことを淡々とこなす。
挨拶と、仕事に必要な連絡は、きちんと行う。でも、それ以上は深入りしない。
相手の機嫌や言動は「自分にはコントロールできないこと」だと割り切って、心を波立たせないようにする。
気の合う大切な友人とは、エピクロス主義で心ゆくまで楽しい時間を過ごす。
そして、社会的な関わりが必要な相手とは、ストア派の盾で自分の心を守りながら、適切な距離で接する。
この二つの道具を上手に使い分けることで、あなたはきっと、もっと軽やかに、自分らしく人と関われるようになっていくはずです。
まとめ エピクロス主義とストア派という”お守り”を、あなたの毎日に
ここまで、古代ギリシャの二つの知恵、「エピクロス主義」と「ストア派」について、そしてその「いいとこ取り」をする3つのコツについて、一緒に長い旅をしてきましたね。
なんだか難しそうに聞こえた二つの哲学も、今ではあなたの心強い味方のように感じていただけていたら、とても嬉しいです。
エピクロス主義は、「心の平穏」という名の温かい毛布のように、あなたを優しく包み込んでくれます。
そしてストア派は、「動じない心」という名の頼もしい盾のように、あなたを不要な悩みから守ってくれる存在です。
これらは決して、「こうしなければならない」という難しい教えではありません。
人生の様々な場面であなたを助けてくれる、心強い「道具」であり、あなただけの「お守り」のようなものなんです。
だから、どちらか一方に染まる必要なんて、まったくありません。
あくまで手段の一つです。
あなたが「今、心地いいな」「今、この考え方が必要だな」と感じる方を、その時々で自由に選んでみてくださいね。
「うまく使い分けなきゃ」なんて、気負う必要もありませんよ。
もし忘れてしまっても、また思い出していただければいいのです。
完璧にできなくたって大丈夫。
ほんの少し意識するだけで、あなたの世界はきっと、昨日より少しだけ優しく、穏やかに見えてくるはずですから。
最後に、もしよろしければ、この記事を閉じた後に試してみてほしい「最初の一歩」を、二つだけ提案させてください。
一つ目は、今夜、寝る前に目を閉じて、今日一日の中で「ちょっとだけホッとした瞬間」を思い出してみること。
温かいお茶を飲んだ瞬間でも、きれいな空を見た瞬間でも、何でもかまいません。
もう一つは、明日の朝、もし何かモヤッとすることがあったら、「これは、私に変えられることかな?」と、一秒だけ心の中で問いかけてみることです。
この古代の知恵が、あなたの毎日をそっと照らす、温かい光となりますように。
あなたの明日が、今日よりも少しでも、穏やかでありますように。

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