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運命と自由意志|脳はどこまで決めているのか?

すべて

運命か、自由意志か。あなたの選択を「脳」が決めているという感覚の正体

「この道を選んだのは、本当に“私”の意志だったのかな?」

人生の大きな分かれ道に立った時だけでなく、日常のふとした瞬間に、そんな不思議な感覚に包まれた経験ありませんか。

お昼ごはんを何にするか選んだ時のように、「これは私が、自分で決めたんだ」と確信できる選択がある一方で、どこか自分ではない何かに動かされているように感じる瞬間も、私たちの人生にはたしかに存在するように思います。

 

例えば、こんな経験はないでしょうか。

 

「ダイエット中だから、今日こそお菓子は我慢するぞ!」と朝は固く誓ったはずなのに、夕方になると、まるで誰かに操られているかのように、無意識にチョコレートの箱に手が伸びてしまう。

あるいは、大切な人との会話でカッとなってしまい、言うつもりのなかったはずの、棘のある言葉が口から飛び出してしまった後の、あの後悔と「どうしてあんなことを…」という、もどかしい気持ち。

 

まるで、自分の中にいる“もう一人の誰か”に、人生のハンドルを不意に乗っ取られてしまうような、あの何とも言えない感覚です。

 

この「自分で決めている私」と「見えない力に動かされている私」が心の中に同居している感覚こそ、実は、大昔からたくさんの人が悩み、考え続けてきた「運命」「自由意志」という、壮大なテーマそのものなのです。

 

この記事では、その不思議な感覚の正体を、ただ「運命だから」という言葉で片付けてしまうのではなく、「脳科学」という現代の私たちに与えられた、新しい道しるべを手にしながら、一緒に探検していきたいと思っています。

 

あなたのその選択、脳は一体どこまで決めているのでしょうか?

 

まずは基本から。「運命論」と「自由意志」をシーソーに例えてみる

本格的に進める出る前に、少しだけ準備運動をしましょう。

この物語の主役である「運命論」「自由意志」という二つの言葉。

一度は耳にしたことがあるかもしれませんが、ここで改めて、その意味を優しくおさらいさせてくださいね。

難しい哲学のお話ではありません。

人生の脚本は決まっている?【運命論】という考え方

まず「運命論」とは、私たちの人生を一本の壮大な映画のように捉える考え方です。

そこには、あなたが生まれる前から、物語の結末までがすべて書かれた、完璧な「脚本」が用意されている。

そして私たちは、その脚本に沿って、それぞれの役を演じている俳優のような存在だ、と考えるのです。

 

嬉しい出会いも、悲しい別れも、思いがけない成功も、つらい失敗も。

そのすべてが、あらかじめ決められたストーリーの一部。

 

だから、どんなに必死にもがいても、脚本に書かれていないアドリブはできないし、物語の結末を変えることはできない。

そう聞くと、少し切ない気持ちになります。

でも、一方で「どうしようもないことは、無理にあらがわなくても良いんだ」と、心をふっと軽くしてくれる優しさも、この考え方は持っているように思えます。

自分の道は自分で選ぶ力【自由意志】という考え方

次に「自由意志」とは、運命論とは対照的に、私たちの人生を、まだ何も描かれていない「真っ白な地図」のように捉える考え方です。

 

どこへ向かうのか、どんな道を通るのか。

そのすべてを、私たち自身が決めることができる。

 

コンパスと勇気だけを手に、自分だけの足で道を切り拓いていく冒険家のような存在だ、と考えるのです。

 

自分の選択と行動次第で、どんな未来でも描くことができる。

そこには、無限の可能性という、胸がときめくような希望があります。

 

ただ、だからこそ、どの道を選んだのかという決断には、大きな責任も伴います。

 

自分の人生のすべての責任は、自分自身にあるのだ、という力強さと、少しの重さが同居している考え方ですね。

敵同士じゃない。心の中で揺れる二つの大切な感覚

さて、この二つの考え方。

あなたは、どちらがより自分に近いと感じましたか?

もしかしたら、「どちらか一方」とは、はっきり言えないかもしれませんね。

それで良いのです。

この二つを、どちらが正しいか決める「敵同士」としてではなく、公園にある「シーソー」のように考えてみませんか。

 

うまくいって自信に満ちている時は、「自分の力で人生を切り拓いているぞ!」と、自由意志の側にぐっと体重をかける。

反対に、失恋したり、どうにもならない壁にぶつかったりした時は、「これも何かの運命だったのかもしれない」と、運命論の側にそっと座って、心を休ませる。

 

私たちはきっと、人生の様々な場面で、このシーソーの上を上手に行ったり来たりしながら、無意識に心のバランスを取っているのではないでしょうか。

この揺れ動きは、決して弱さなどではなく、変化し続ける毎日をしなやかに生きていくための、私たち人間が持つ素晴らしい知恵なのだと思います。

 

さあ、心の準備運動はここまでです。

 

では、このシーソーを動かしている私たちの脳の中では、一体、どのような神秘的な出来事が起きているのでしょう?

【脳科学の結論】あなたの「意志」より0.35秒早く、脳は未来を決めている

さあ、ここからはいよいよ、この旅の最もミステリアスな部分へと足を踏み入れます。

 

「私が決める」という、当たり前だと思っていた感覚。

 

その裏側で、私たちの脳は、一体どんな働きをしているのでしょうか。

意識が気づく前に…脳の「準備電位」が行動を開始していた

物語の舞台は、1980年代のアメリカ。

ベンジャミン・リベットという一人の科学者が行った、ある有名な実験から始まります。

彼は、実験に参加してくれた方に、とてもシンプルなお願いをしました。

 

「あなたの好きなタイミングで、手首をくいっと曲げてください。そして、心の中で『よし、動かそう』と決めた瞬間を、時計の針で覚えておいてくださいね」

 

同時に、リベット博士は、参加者の脳が発する微弱な電気信号を、特別な機械でじっと観察していました。

そして、世紀の発見をすることになるのです。

驚くべきことに、

 

本人が「よし、動かそう!」と心の中で決めるよりも、なんと平均で0.35秒も前に、脳はすでに手首を動かすための準備を始めていたのです。

 

この、行動を起こす前に脳から発せられる電気信号を、専門の言葉で「準備電位(じゅんびでんい)」と呼びます。

まるで、ミステリー小説を読んでいて、「犯人はこの人だ!」と私たちが気づくずっと前から、犯人はもう次の犯行の準備を始めていた…とでも言うような、少し背筋がぞくっとするような事実ですよね。

「私が決めた」は錯覚?“意識は後付け”という衝撃の仮説

この「0.35秒のズレ」は、一体何を意味するのでしょうか?

リベット博士の実験から導き出される、一つの仮説があります。

それは、「私が手首を動かそうと“意識したから”動いた」のではなく、

 

「脳が“勝手に”動かす準備を始めた後で、私たちの意識が『あ、そうそう、私がやろうとしてたんだ』と、その決定を自分のものとして、後から追認しているだけかもしれない」

 

というものです。

なんだか、少しむずかしいでしょうか。

こんな風に例えると、分かりやすいかもしれません。

あなたの「意識」が会社の社長だとします。そして、あなたの「脳」は、超優秀な秘書です。

ある日、社長(あなたの意識)が「よし、このプロジェクトを承認する!」と得意げにハンコを押したとします。

でも実は、そのずっと前から、超優秀な秘書(あなたの脳)は、完璧な資料を準備し、根回しを済ませ、プロジェクトが成功するための全ての段取りを終えていたのです。

 

社長のハンコは、いわば最後の形式的なもので、実質的な決定は、もっと前に行われていたのかもしれない、と。

 

この話を聞くと、こう感じてしまうかもしれません。

 

「え、じゃあ私の“意志”って、ただのお飾りにすぎないの?」

「私は、自分の脳に操られているだけの、ロボットみたいな存在なの…?」

 

でも、安心してくださいね。

ここで終わりではないのですから。

この超優秀な秘書(脳)の決定に対して、社長(意識)である私たちに残された、たった一つの、しかし非常に重要な「ある力」が存在します。

絶望は不要。脳の決定に「NO」を言える“最後の砦”

前の章でお話しした、「意識は後付けかもしれない」という仮説。

もしかしたら、少しだけ心がざわざわしてしまったかもしれませんね。

でも、私たちはただ、脳が決めたことを眺めているだけの無力な存在ではありません。

実は、あのリベット博士自身も、自らの実験結果が示す未来に悩み、そして、一つの大きな希望を見出していたのです。

 

それが、私たちの意識に残された、最後の、そして最強の切り札。

「拒否権」と呼ばれる力です。

 

これは、脳が無意識のうちに「これをやろう!」と提案してきた行動に対して、私たちの「意識」が、土壇場で「いや、それはやめておこう」と、NOを突きつけることができる力のこと。

行動を「始める」のは脳の無意識かもしれませんが、それを「やめる」自由は、私たちの意識にちゃんと残されていたのです。

 

もう少し、具体的にイメージしてみましょうか。

例えば、あなたは今、ダイエットの真っ最中。

目の前には、とろりとしたクリームが乗った、それはそれは美味しそうなケーキがあります。

あなたの脳は、過去の記憶から「これは最高に美味しい!」と判断し、「食べたい!」という準備電位を無意識に発生させます。

そして、あなたの手が、まるで自動操縦のようにケーキに伸びそうになる、そのコンマ数秒の瞬間。

 

「…いや、だめだ。私は今、頑張っている最中じゃないか」

 

あなたの「意識」が、ぐっとブレーキをかける。

これが、拒否権の働きです。

 

あるいは、誰かとの口論の最中。

相手の心ない一言にカッとなり、あなたの脳は「もっとひどい言葉で言い返せ!」と、とっておきの攻撃的な言葉を準備します。

その言葉が、喉から飛び出しそうになる、まさにその寸前に。

 

「…いや、これを言ったら、もう二度と元には戻れないかもしれない。今は黙っておこう」

 

あなたの「意識」が、その行動をすんでのところで中止させる。

これもまた、あなたの尊い拒否権が、未来を守ってくれた瞬間です。

私たちは、自分の中から湧き上がってくる全ての衝動に従うわけではありません。

むしろ、そのほとんどを「やめておこう」と判断し、社会の中で生きています。

動物が本能のままに行動するのに対して、人間は目の前の欲求や衝動をぐっとこらえ、より良い未来のために行動を選ぶことができる。

この「こらえる力」「やめる力」こそが、私たちの文化や倫理観を築き上げてきた、とても人間らしい能力なのではないでしょうか。

そう考えると、「自由意志」とは、ゼロから何かを生み出す創造的な力だけを指すのではないのかもしれません。

迫りくる無数の選択肢の中から、自分にとって本当に大切なものを守るために、勇気を持って「NO」と言える自由

それもまた、私たちの持つ素晴らしい自由意志の一つの形なのです。

「よかった、私たちの意識にもちゃんと大切な役割があるんだな」

そう、少し安心していただけたでしょうか。

 

では、さらに一歩踏み込んで、こんな疑問について考えていきましょう。

 

「そもそも、脳が提案してくる内容そのものを、日々の努力によって、もっと良いものに変えていくことはできないのだろうか?」

 

その答えは、もちろん「YES」です。

次の章で、その仕組みについて、詳しくお話ししますね。

「脳が決める」なら努力は無駄?いいえ、あなたの意志が未来の脳を育てる

さて、ここまでの話を聞いて、あなたの心にはきっとこんな疑問が浮かんでいることでしょう。

「脳が無意識にたくさんのことを決めているのなら、私が毎日コツコツと続けている努力って、結局はあまり意味がないのかな…?」

資格の勉強、健康のための運動、より良い人間関係を築くための気遣い。

れら全てが、大きな脳の決定の前では、ちっぽけなものに思えてしまうかもしれません。

結論からお伝えしますね。

 

あなたのその尊い努力は、決して、決して無駄ではありません。

 

むしろ、私たちの脳の仕組みを知れば知るほど、その一歩一歩に、とてつもなく大きな意味があることに気づかされるのです。

あなたの毎日を支える、脳の優れた「自動操縦(習慣)」機能

まず、脳が無意識に多くのことを決めてくれているのは、私たちを怠けさせるためではなく、私たちを助けるためなのだ、という視点を持ってみませんか。

 

例えば、毎朝の歯磨きを思い出してみてください。

「まず歯ブラシを持って、歯磨き粉をつけて、右の上から…」なんて、いちいち考えていませんよね。

あるいは、自転車に乗る時や、パソコンで文字を打つ時も。

これらは全て、脳が「これはもう覚えたから、自動でやっておくね!」と、素晴らしい「自動操縦モード」で引き受けてくれているのです。

もし、これら全てを毎回意識してやっていたら、私たちは一日が終わる頃には疲れ果てて、本当に大切なことを考えるエネルギーなんて、残っていないでしょう。

脳は、私たちの貴重な「意識」という名のバッテリーを節約するために、たくさんのタスクを習慣化し、無意識の領域で引き受けてくれている。

そう考えると、脳はまるで、黙ってあなたを支え続けてくれる、とても優秀で健気なパートナーのように思えてきませんか?

努力は脳への投資。「神経可塑性」があなたの未来を形作る

では、ここからが本題です。

この優秀なパートナーに、「どんな自動操縦をお願いしたいか」を教えることができるのでしょうか。

その答えこそ、この記事でお伝えしたい、言葉の一つ。



「神経可塑性(しんけいかそせい)」

 

これは、「脳は、日々の経験や学習によって、物理的にその構造や配線を変化させることができる」という、脳の素晴らしい性質のこと。

まるで、柔らかな粘土のように、私たちの行動や考え方次第で、脳は少しずつ形を変えていくのです。

例えば、あなたが今日から毎日、寝る前に5分だけ英単語を覚えるとします。

すると、脳の中には、今までなかった「英語の道」が新しく作られ始めます。最初は細く頼りない道でも、毎日続けることで、その道は少しずつ太く、しっかりとした高速道路のようになっていくのです。

あるいは、意識して「ありがとう」と口にする習慣をつけてみましょう。

すると、脳は「感謝」を感じやすい回路をどんどん強化していきます。

やがて、今まで気づかなかったような小さな幸せにも、自然と目が向くようになるかもしれません。

逆に、いつも誰かの悪口や不満ばかりを口にしていると、脳はその「不満を探す道」ばかりを強化してしまい、世界がなんだか灰色に見えてきてしまうのです。

つまり、

あなたの今日の「意識的な努力」は、未来の脳の「無意識の判断(自動操虜)」を、より良い方向へと育てていくための、最高の「種まき」であり、「投資」なんですよ。

今日の小さな選択が、明日の「無意識のあなた」を導く

もう、お分かりいただけましたよね。

今日のあなたが「よし、5分だけストレッチをしよう」と自由意志で選択し、行動する。

その小さな一歩が、あなたの脳の配線を、ほんの少しだけ変えます。

これを繰り返すことで、数ヶ月後のあなたは、ストレッチをすることが「当たり前の習慣」となり、無意識に、そして心地よく体を動かしている自分になっているかもしれません。

努力は無駄なのではなく、

 

今日のあなたの意志ある努力が、未来のあなたを助けてくれる“最高の自動操縦システム”を、今まさに、作り上げている最中なのです。

 

なんだか、自分自身の未来に、少しワクワクしてきませんか?

最後に、これまでを振り返りながら、私たちの人生という、たった一つの物語を、これからどう描いていくかについて、一緒に考えてみましょう。

結論 あなたの人生は「脳の提案」と「あなたの自由意志」による共同作品

ここまで、長い話にお付き合いいただき、本当にありがとうございます。

不思議な脳の世界を探検しながら、「運命」と「自由意志」という、壮大なテーマについて一緒に考えてきました。

 

少しだけ、振り返ってみましょうか。

まず、私たちの心の中には、運命と自由意志という「シーソー」がいつも存在し、揺れ動いているのはごく自然なことでした。

そして、私たちの「意志」よりも0.35秒も早く、脳が行動の準備を始めているという、少し驚きの事実にもふれましたね。

 

しかし、私たちは絶望しません!

 

なぜなら、脳の決定に「NO」と言える、最後の砦である「拒否権」という、尊い力が残されていたからです。

さらに、日々の意識的な努力や選択が、「神経可塑性」という脳の性質によって、未来の脳そのものを育てていく力を持っていることも知りました。

 

では、結論です。

あなたの人生の脚本家は、一体誰だったのでしょうか。

その答えは、「あなた一人ではなかった」ということです。

あなたの人生という物語は、あなたという存在が生まれてから今日までの全ての経験や学びを記憶し、最善と思われる道を瞬時に提案してくれる、超優秀なパートナーとしての「脳」

そして、その提案をじっくりと吟味し、「よし、その道でいこう!」と承認したり、「いや、今回はこっちの道を選んでみたい」と新しい選択をしたり、時には「今は動くべきではない」と拒否権を発動したりする、最終的な決定権を持つ監督としての「あなた(意識)」

 

この二人による、唯一無二の「共同作品」なのです。

 

時には意見が合わずにぶつかったり、時には息の合った連携プレーを見せたりしながら、この素晴らしい二人三脚によって、あなたの人生という物語は、今この瞬間も、紡がれ続けているのですね。

もう、難しく考える必要はありません。

これからは、この素晴らしいパートナーである脳に、「どんな提案をしてほしいか」を、監督であるあなたが優しく教えてあげてみませんか?

例えば、いつもなら無意識にスマホを手に取ってしまう、その瞬間に。

一度だけぐっとこらえて、窓の外の雲の流れを30秒だけ、ぼーっと眺めてみる。

つい「あー、疲れた」と口にしそうになったら、「うん、今日もよく頑張った」と、優しい言葉に言い換えてみる。

寝る前に、今日あった嬉しかったことを、ほんの小さなことでも良いので、一つだけ思い出してみる。

これらは全て、未来の脳への「監督、次はこういう心地よい提案をよろしくね!」という、あなたからの愛情のこもったオーダーになります。

 

「運命」とは、あなたの脳が、これまでの経験から作り上げた、最も可能性の高い未来の提案書なのかもしれません。

そして「自由意志」とは、その提案書をその手に受け取り、時に書き加え、時に書き直し、時に採用しながら、あなただけの物語を完成させていく、監督であるあなた自身の、創造的な力なのです。

 

大丈夫。

あなたの人生のハンドルは、ちゃんとあなたのその手にあります。

さあ、優秀で愛すべきパートナーと一緒に、これからどんな素敵な物語を紡いでいきましょうか。

この記事が、そのための小さな、しかし確かな一歩を踏み出すきっかけとなることを、心から願っています。

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