何のために働き、何にお金を使えば、心は満たされるのだろう。
モノで埋まらないその穴は、埋める材料が違うだけ。
この記事では、心理学に基づいた「経験にお金を使う技術」と、迷いを断つ5つの基準を紹介するよ。
人生の最期に残るのは、集めたモノより震えるような思い出だけ。
この問いは、人生の使い方そのものを問い直すものなんだ。
なぜ「豊かさ」は所有より「経験」で決まるのか?科学が示す3つの理由

「経験のほうが大事だよ」 なんて言われても、なんだかふわっとした精神論に聞こえるかもしれないね。けれど、これは現代の心理学や行動経済学の世界では、もうはっきりと答えが出ていることなんだ。
まずは、なぜ私たちの脳が「所有」では満たされず、「経験」で満たされるのか。その仕組みを、少しだけ紐解いてみようか。
【ヘドニック・トレッドミル】脳は新しいモノに「2週間」で飽きるようにできている
新しいスマートフォンを手に入れた時のことを、ちょっと思い出してみて。最初の数日は、指に吸い付くような操作感や、吸い込まれそうな画面の綺麗さに感動したはずだよ。傷がつかないように、それは丁寧に扱ったりしてね。
でも、2週間も経てばどうかな?それは「心を揺さぶる対象」から、ただの「あって当たり前の道具」に変わってしまっていないかな。もしかしたら、もう次のモデルの噂を追いかけていたりして。
これは心理学で「ヘドニック・トレッドミル(快楽順応)」と呼ばれる現象だよ。
※科学的に厳密な固定期間がなく、必ずしも2週間で飽きるわけではない。
私たち人間には、環境に適応する力が備わっている。暑さや寒さに慣れていくように、「手に入れた喜び」にも、驚くほどすぐに慣れてしまうんだ。生きていく上では便利な機能なんだけど、幸福感という面では、少し厄介な性質だね。
どんなに高い車も、見上げるような広い家も、手に入れた瞬間が幸福のピーク。
あとは時間が経つにつれて、その喜びは砂時計の砂みたいに、さらさらとこぼれ落ちていく。そして、その空白を埋めるために、また新しい何かが欲しくなる。
まるで、動く歩道(トレッドミル)の上を走り続けているみたいに、いくら走ってもゴールにはたどり着けない。 あなたがモノを買っても満たされないのは、あなたのせいじゃない。
この「脳の慣れ」という仕組みのせいなんだよ。
【記憶の資産化】思い出は色褪せず、時間とともに価値が上がる「逆減価償却」資産
一方で、「経験」はどうだろう。
例えば、数年前に行ったあの旅のこと。
当日は土砂降りの雨に降られて、予定がめちゃくちゃになったかもしれない。道に迷って、途方に暮れた夜もあったかもしれないね。
でも不思議なことに、今振り返ると
「あの時の雨宿り、なんだかおかしかったね」
「迷ったおかげで、あんなに美味しい店に出会えたよね」
なんて、笑い話になっていないかな?
これは米コーネル大学のトーマス・ギロヴィッチ教授の研究でも言われていることなんだけど。「経験」というのは、時間が経つほど記憶の中でゆっくりと磨かれ、美化されていく。
つまり、価値が上がっていく性質を持っているんだよ。
ブランド品や車といった「モノ」は、手に入れた瞬間から古くなり、価値が落ちていくよね(減価償却っていう)。
けれど「経験」は逆。
時間が経てば経つほど、記憶の中で芳醇に熟成されて、あなたを支える大切な資産になる。
辛かった経験ですら、後になれば「自分を語る」ための最高のスパイスになるんだ。 経験にお金を使うっていうのは、自分の中に、一生価値が上がり続ける資産を積み立てるようなものなんだよ。
【比較のパラドックス】所有物は「他者との競争」を生み、経験は「自分だけの物語」になる
3つ目の理由は、「他人との比較」かな。
バッグや時計、車……こういう「所有物」は、数字やブランドの名前で、どうしても他人と比較できてしまう。これを経済学では「地位財」なんて呼んだりするよ。
「私のバッグより、あの人のほうが新作だ」
「同僚のほうが、いいグレードの時計をつけている」
上を見始めれば、もうキリがないんだよね。どんなにいいモノを手に入れても、自分より上の誰かが現れた瞬間に、せっかくの満足感が劣等感にすり替わってしまう。これが「所有」の少し怖いところ。
でも、「経験」は誰にも奪えないし、比べようがないんだ。
あなたが旅先で、息を呑むような夕日に出会ったこと。大切な人と、笑いながら食べた料理の味。 その時の心の震えは、誰の物差しでも測れない。「あの人の夕日より、私の夕日のほうがランクが上だ」なんて、誰も思いもしないでしょ?
誰かが宇宙に行ったり、人類初の○○を体験しようが、比べるようなものではない。
経験は、あなただけのもの。誰とも比べられない、あなただけの物語なんだ。「私はこれを見てきた」「私はこれを感じた」という記憶の積み重ねこそが、「私はこういう人間だ」という確かな自分(アイデンティティ)を作ってくれるんだよ。
【この章のポイント】
脳の仕組み(快楽順応)により、どんな高級品も手に入れた瞬間に「当たり前」になり、満足感は続かない。
モノは時間が経つと劣化するが、経験(思い出)は記憶の中で美化され、価値が上がり続ける資産となる。
所有物は他人と比較して劣等感を生みやすいが、個人の体験は比較不可能であり、確かな「自分らしさ」を作る。
「経験」を怖がり、「所有」に逃げてしまう心理的正体
頭では、きっとわかっているんだよね。 「モノより思い出」なんて言葉、もう耳にタコができるほど聞いてきただろうし。
それなのに、なぜ私たちはボーナスが入ると、旅行の予約サイトよりも先に、通販サイトやブランドのページを覗いてしまうのかな。なぜ、「形に残らないもの」に自分のお金を投じることに、これほどまで躊躇してしまうんだろうね。
それはね、あなたが弱いからじゃないよ。私たちの心の奥底に、「経験を遠ざけて、モノに依存させる」強力なブレーキがかかっているだけなんだ。
ここでは、そのブレーキの正体を3つの視点から少し深く探ってみようか。 自分の心の「クセ」に気づくだけで、衝動的な買い物は、驚くほど静かに収まっていくものだよ。
形に残らない=損?「消えてなくなるもの」にお金を払えない損失回避の罠
1万円の服と、1万円の食事。
どっちにお金を使うのが「お得」だと感じるかな?
たぶん、直感的に「服」だって思うはずだよ。だって食事は数時間で消えてなくなっちゃうけど、服はずっと手元に残る気がするからね。
人間には「損失回避」っていう、とても強い本能があるんだ。「得をすること」よりも「損をしないこと」を、どうしても優先してしまう性質のことだね。
汗水垂らして稼いだ大切なお金を、「形に残らない一瞬の出来事」と交換するのは、なんだかお金をドブに捨てているような……そんな損をした気分になる。これが、私たちが経験にお金を使えない、一番の理由なんだよ。
でも、少しだけ視点を変えてみようか。
「モノ」は確かにそこに残る。でもそれは同時に、「管理する手間」や「場所を取るコスト」、そして「古くなっていくのを見るストレス」という負債も一緒に背負い込むってことなんだよ。
一方で、経験はどうかな。
確かに目の前から、その物体は消えてしまう。でも、あなたの内側には確実に残っているよね。
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見たことのない景色を知ったという「知恵」
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トラブルを乗り越えたという「度胸」
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美味しかったねと語り合える「エピソード」
これらは場所も取らないし、絶対に古くならない。誰にも盗まれないし、税金だってかからない。(かかったらすごいね。「経験税」なんてちょっと笑えない)
経験にお金を使うっていうのは、消えてなくなるものにお金を払うんじゃなくて、「自分という人間に、目に見えない装備品を足していく」ことなんだよ。
味を出していく感じかな。
空間を埋めるんじゃなくて、心を埋める。そう考えれば、経験こそが一番「損をしない」買い物だと思えてこないかな?
所有物は「自信のなさ」を隠す鎧。「中身」で勝負するのが怖いからモノで着飾る
少し耳の痛い話になっちゃうかもしれないけど、私たちがブランド品や高級なモノを欲しくなる時、その心の裏側には、小さな「自信のなさ」が隠れていることが多いんだ。
「ありのままの自分」で勝負するのが、少し怖い。
自分の「中身」が空っぽな気がして、誰かに見下されるのが不安でたまらない。
だから、誰もが価値を認める「わかりやすいブランド」や「流行のアイテム」を身にまとうことで、自分の価値を底上げしようとするんだ。
つまりね、所有物は自分を守るための「鎧(よろい)」なんだよ。
鎧を着ている間は、確かに安心できるよね。「素敵なバッグだね」って褒められれば、まるで自分自身が認められたような気分になれる。でも、本当に豊かな人や、魅力的な人を思い浮かべてみて。彼らは意外と、さらっとしたTシャツ一枚で笑っていたりしないかな?
なぜ彼らがそれで平気なのか。
それは、鎧なんて必要ないくらい、その「中身(内面)」が鍛えられているからだよ。
たくさんの場所へ行き、たくさんの人と出会い、たくさんの失敗や感動を経験して、自分の言葉を持っている。だから、わざわざ自分を飾り立てる必要がないんだね。
経験にお金を使うのは、勇気がいることだよ。着心地のいい鎧を脱いで、生身の自分を鍛えにいくようなものだから。でも、モノで着飾った自信は、そのモノが古びれば一緒に消えてしまう。経験で培った自信だけが、どんな時もあなたを支えてくれる、本当の強さになるはずだよ。
SNS映えという名の「所有」。他人の「いいね」のために旅をしていないか
現代ならではの、もう一つの罠があるんだ。
せっかく旅行や食事といった「経験」にお金を使っているのに、ちっとも心が満たされないケース。それは、経験すらも「SNSに投稿するための素材集め」になっちゃっている時だね。
絶景スポットに着いて、あなたが最初にすることは何かな? 自分の目でその景色を焼き付けるよりも先に、スマホを取り出して、一番「映える」角度を探していない?
もしそうなら、それは「経験」をしているんじゃないよ。
「他者からの承認(いいね)」や「デジタルデータ」という、新しい形の「所有物」を集めているだけなんだ。
カメラのレンズ越しに見る世界は、家のテレビで見ているのと、脳の反応はほとんど変わらない。風が運んでくる温度、市場のざわめきや匂い、足の裏に伝わる地面の感触……。そういう五感のすべてで「生」の情報を取り込んで、初めてそれはあなたの血肉になる。
「いいね」がつかなくても、誰にも見せなくても、あなただけが知っていればそれでいい。他人の評価なんて気にせず、自分の感性だけで世界と向き合う時間。それこそが、今の時代における一番の贅沢なんじゃないかな。
【この章のポイント】
「経験は消えるから損」なのではなく、場所を取らず色褪せない「内面の資産」として残り続ける。
モノへの執着は「自信のなさ」の裏返し。経験にお金を使うことは、心の鎧を脱いで「中身」を鍛えること。
SNSのための行動は「経験」ではなく「承認の所有」。レンズ越しではなく、五感で感じたことだけが本当の豊かさになる。
人生の質を変える「体験」の選び方・失敗しない5つの投資基準

「経験が大事なのはわかったけれど、具体的に何にお金を使えばいいのかな?」
「海外へ行くような、まとまったお金も時間もないし……」
そんなふうに思わなくていいよ。大丈夫。人生を彩るような経験に、必ずしも大金が必要なわけじゃないんだ。 大切なのは「金額」の多寡じゃない。
あなたの脳にどんな刺激を届けるか……その「質」なんだよ。
日常の中で、どうお金を使えばあなたの心は一番潤うのか。迷ったときの道標になる「5つの投資基準」を紹介するね。 何かを選ぶときに思い出してみて。
【基準1:能動性】受け身の娯楽より、自分が主人公になって「汗をかく体験」を選ぶ!
一つ目の基準は、あなたが「受け身(パッシブ)」か「能動的(アクティブ)」か、ということ。
例えば、家でソファに深く沈んで、動画サイトを何時間も眺める。これは「受け身」の娯楽だね。とっても楽だし、心地いいけれど……悲しいかな、記憶にはほとんど残らないし、幸福感も長続きはしないんだ。
一方で、キャンプに行って不器用ながらも火を熾してみたり、料理教室で粉まみれになってパスタを打ってみたり。下手でもいいから、誰かの前で楽器を奏でてみる。これは「能動的」な体験だよ。
心理学者のミハイ・チクセントミハイは、人が何かに没頭して時間の感覚を忘れる状態を「フロー」と呼び、これこそが幸福の源泉だと言ったんだ。フローはね、ただ座って画面を見ているだけじゃ訪れてくれない。自分で手を動かし、少しの失敗や「面倒くさいな」っていう壁を乗り越えて、工夫したその先に待っているものなんだよ。
お金を使うなら、あなたが観客席に座るものより、あなたがステージに立つ——つまり主人公になれる体験を選んでみて。「ちょっと大変そうかな」と感じるくらいのほうが、終わったあとの充実感は、それはもう格別なんだから。
【基準2:道具への投資】「所有」が悪ではない。そのモノは「新しい世界」を連れてくるか?
「じゃあ、モノは一切買っちゃいけないの?」
なんて、そんな極端なことは言わないよ。
ここがとても大切なポイントなんだけど、「経験を生み出してくれるモノ(経験的財)」への投資は、すごく賢い選択だと思うんだ。
例えば、登山靴や自転車のようなアウトドア用品はもちろん。インドア派のあなたなら「質の高いキッチングッズ」や「指に馴染む万年筆」、「ちょっといい椅子」なんかも、素晴らしい投資になる。(ちゃんと使わないと意味がないよ)
新しい包丁が手元にあれば、「今度の休みは市場で魚を買って捌いてみようかな」って、新しい行動が芽生えるでしょ?書き心地の良い万年筆があれば、「久しぶりにあの人に手紙を書いてみよう」って、豊かな時間が生まれる。椅子に関してはほとんどの作業の土台になる。
判断基準は、とてもシンプル。
「これを買うことで、私の”行動”は変わるかな?」
もし答えが「YES」なら、それは単なるモノじゃない。未来の経験への「招待状」だよ。堂々と手に入れていい。
逆に、ただ棚に飾って眺めるだけで、あなたの行動を何も変えてくれないものは、少し立ち止まったほうがいいかもしれないね。
【基準3:意外性】遠くへ行かなくてもいい。近所の「入ったことのない店」も立派な冒険
脳は「予測できない刺激」が大好きなんだ。
毎日同じ通勤路、毎日同じコンビニの決まったお弁当……。そんな繰り返しの中では、脳は「新しい情報はない」と判断して、その時間を記憶から消し去ってしまう。大人が「一年があっという間に過ぎた」なんて零すのは、たぶんそのせいなんだよ。
経験の価値は、移動した距離で決まるわけじゃない。
「いかに日常のパターンを壊せるか」で決まるんだ。
だから、何十万円もかけて地球の裏側まで行く必要なんてない。
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最寄りの駅の一つ隣で、ふらっと降りて散歩してみる。
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お店でメニューを見て、一番味が想像できない料理を頼んでみる。
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あえて自分とは無縁そうなジャンルの本を一冊、レジへ持っていく。
そんな小さな「違和感」や「ドキドキ」にお金を使ってみて。日常という砂漠にオアシスを作るのは、お金の束じゃなくて、あなたの「好奇心」なんだよ。
【基準4:時間創出】「嫌な時間」をお金で消し、生まれた時間で「好きなこと」をする
4つ目は、少し視点を変えて「時間を買う」という考え方。私たちの人生、持ち時間は限られているからね。
掃除、洗濯、苦手な移動……もしあなたがそれを「苦痛だな」と感じているなら、そこにお金を使うのは、決して贅沢なんかじゃない。お掃除ロボット、乾燥機付きの洗濯機、ときにはタクシー。あるいは家事代行。
これらにお金を使って、あなたの「マイナスの時間」をゼロにするんだ。
そして浮いた時間で、ゆっくり本を読んだり、大切な人と語らったり、湯船に浸かってぼーっとしたりする。これは「人生の持ち時間を買い戻す」という、この上なく知的な投資だよ。
ただ、一つだけ注意してね。せっかく買い戻した時間で、なんとなくスマホを眺めて時間を溶かしてしまっては、もったいないから。「生まれた時間で、何をしようかな」って、そこまでセットで考えておいて。
H3:【基準5:共有】一人で完結せず、「誰かと感情を分かち合う」ことにお金を使う
最後の基準は、「誰かと一緒か」ということ。
幸福学の研究ではね、幸福度を高める一番の要因は「良好な人間関係」だって言われている。どんなに高級なフランス料理を一人で黙々と食べるより、気心の知れた仲間と笑いながら囲む鍋のほうが、ずっと心に沁みることがあるでしょ?心理学ではこれを「喜びの共有効果」って呼ぶんだ。
もし手元に1万円あったら、自分のための何かを買うのもいいけれど、友人を誘って「美味しいものを奢る」という選択肢を選んでみて。「あの時のご飯、美味しかったよね」「楽しかったね」っていう思い出は、二人の関係を深く耕して、その後何年経っても素敵な会話のネタになってくれる。
経験にお金を使うことは、人間関係という、目に見えない財産への投資でもあるんだよ。一人きりの冷たい所有より、誰かと寄り添う温かな共有を、大切にしてほしいな。
【この章のポイント】
受け身で見ているだけの娯楽より、自分が手を動かし参加する「能動的な体験」が深い充実感を生む。
「モノ」であっても、包丁やペンのように「次の行動や交流」を生み出す道具なら、それは良い投資である。
距離は関係ない。いつものパターンを崩し、脳に「新しい刺激」を与えることにお金を使う。
家事代行や時短家電で「時間を買う」ことは、人生の質を上げる賢い選択。(ただし浮いた時間の使い道が重要)
幸福の最大要因は人間関係。一人で完結せず、誰かと喜びを共有することにお金を使うと満足度が持続する。
豊かさを「所有」から「経験」へシフトさせる実践的な思考法

ここまで、経験の価値や選び方についてお話ししてきたね。頭では「なるほどね」って、少しは納得してもらえたかな。
でも、いざ日常に戻ると、街中の煌びやかな広告やSNSに流れてくる綺麗な画像が、あなたの物欲をちくちくと刺激してくるはずだよ。悲しいけれど、人間は「知っている」だけでは、なかなか行動を変えられない生き物だから。
そこで、今日から誰でもできる「所有から経験へ」スイッチを切り替えるための、3つの具体的な思考ワークを伝えておくね。ただの精神論じゃないよ。物理的な「行動」として、あなたの生活にそっと組み込んでみて。
買い物カゴに入れる前に。「これは誰に見せるため?」と3秒だけ自問する
欲しいものを見つけてレジに向かう時、あるいはネット通販で「注文を確定する」ボタンを押す直前。「3秒間」だけ、指を止めるルールを作ってみて。
そして、心の中で自分にこう問いかけるんだ。
「もし、この地球上に私一人しかいなくても、私はこれを買うかな?」
この質問はね、あなたの買い物が「自分の心を満たすためのもの(本質的欲求)」なのか、それとも「他人に見せるためのもの(見栄)」なのかを、明確に暴いてしまうよ。
もし「地球に一人でも、迷わず買うよ」って即答できるなら、それは本当にあなたが好きなもの。あなたの感性に響いている宝物だ。胸を張って手に入れるといい。
でも、もし「誰も見ていないなら、もっと安い服でいいかな」「一人なら、こんな高い時計は必要ないかも」って一瞬でもよぎったなら……。それはね、あなたが欲しいんじゃなくて、「他人の目」が欲しがっているだけなんだよ。
そんなときは、そっと棚に戻そう。この「3秒の自問」を癖にするだけで、無自覚な浪費は驚くほど静かに減っていく。そして、その浮いたお金が、あなたの次の「経験」への大切な軍資金になるんだ。
「いつか」を「日時」に変える。手帳に『体験の予定』を先に書き込む先取り術
「お金が余ったら、どこか旅行にでも行こうかな」
そう思っているうちは、残念だけれど、一生どこにも行けないよ。
「パーキンソンの法則」っていうのを知ってるかな?支出の額は、収入の額と等しくなるまで膨張する……という法則だね。意識していないと、私たちはあるだけのお金を、日々の細々とした消費で使い切ってしまうようにできているんだよ。
だから、順序を逆にする。 給料やボーナスが入ったら、貯金をするよりも先に、まず「体験の予約」をしてしまうんだ。
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ずっと行きたかった舞台のチケットを、先に取ってしまう。
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気になっていたあの温泉宿を、その場で予約する。
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学びたかった講座に、えいっ、と申し込む。
先に「経験」への支払いを済ませて、残ったお金で日々の生活をやりくりする。これが一番確実な方法だよ。
それにね、これには嬉しいおまけがあるんだ。予約をしたその瞬間から当日までの数週間、「あと何日で旅行だ!」っていう、あの浮き立つようなワクワク感をずっと楽しめるでしょ?
専門的な言葉では「期待効用」なんて呼ぶけれど、所有物は買った瞬間が幸福のピークなのに対して、経験は「待っている時間」さえも贅沢な幸福に変えてくれる。
未来の予定にお金を払うのは、当日までの毎日に彩りを添える「前払いボーナス」のようなものなんだよ。
「行為後悔」は最初の方が威力が高くて、時間がたつにつれだんだんと落ち着いてくるけど、「非行為後悔」(やらなかった後悔)はじわじわと時間がたつにつれ大きくなっていくんだよ。
そのことも意識しておくといいかも。
体験の「解像度」を上げる。ただ「消費」するのではなく深く「味わう」技術
最後に、とっても大切なことを一つだけ。 せっかく素敵な場所に行っても、心ここにあらずで次の予定を検索していたり、写真を撮ることだけに必死になっていたりしては、本当にもったいないよ。
体験の価値を決めるのは、使った金額じゃない。あなたの「味わう力」なんだ。
美味しいコーヒーを飲むとき、スマホを眺めながら流し込めば、それはただの「作業」だよね。でも、スマホを置いて、立ち上る香りを深く吸い込み、舌の上で転がる温度を感じ、店内の静けさに耳を傾けてみる。
そうすれば、それは「極上のリラックス体験」に化ける。
同じ10分の体験でも、あなたの感性のフィルターが開いているかどうかで、受け取れる情報の「解像度」はまるで違ってくるんだよ。
だから、体験の最中は、意識してスマホをバッグの奥にしまってみて。そして、五感のスイッチをすべて「オン」にするんだ。
「風が少しだけ、冷たくなってきたな」
「遠くの方で、犬が鳴いてるね」
「この料理、なんだか複雑なスパイスの香りがするよ」
そうやって、目の前の瞬間をじっくりと、深く味わうこと。それこそが、一度きりの体験を、一生色褪せない鮮やかな記憶として脳に焼き付ける、唯一の魔法なんだよ。
【この章のポイント】
購入前に「地球に一人でもこれを買うか?」と3秒自問し、見栄による浪費を防ぐ。
「お金が余ったら」ではなく、収入が入った瞬間に「体験の予約」をして予算を確保する。
体験中はスマホを置き、五感を使って深く「味わう」ことで、記憶の解像度を高める。
まとめ。所有は一瞬、経験は一生。人生を彩る「思い出」を集めよう

さて、まとめ。
明日からの生活で、何にお金を使おうか迷ったときは、このポイントを思い出してみて。
人生の最期のとき、あなたの頭の中を走馬灯のように駆け巡る景色の中に、一体何が映るかな。
クローゼットに積み上がったブランド品の箱や、通帳に並んだ無機質な数字を眺めて、「ああ、いい人生だったなぁ」なんて微笑む人は、きっといないと思うんだ。
思い出されるのは、きっと……こんな景色。
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大切な人と、お腹がよじれるほど笑い転げた夜のこと
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目の前に広がる圧倒的な大自然に、ただ言葉を失ったあの瞬間のこと
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派手に失敗して泥だらけになって、それでも何かに夢中になって挑んだ日々の熱気
そういった、心が震えた瞬間の「総量」こそが、あなたの人生の「豊かさ」の正体なんだよ。
お金はね、ただの引換券にすぎない。それを、一瞬で輝きを失ってしまう「モノ」と交換するのか。それとも、一生あなたを内側から温め続けてくれる「経験」と交換するのか。
選ぶのは、あなた自身。
重たい「所有」の荷物を一度下ろして、軽やかに踏み出してみよう。
あなたの人生に、最高の一頁が書き加えられるのを、願っているよ。
【この記事のポイント】
脳はすぐに慣れる:どんな高級品も、手に入れた瞬間に「当たり前」になり、満足感は続かない。
経験は資産になる:モノは劣化するが、思い出は記憶の中で美化され、価値が上がり続ける。
比較しない幸せ:所有は他人との競争を生むが、経験はあなただけのアイデンティティ(自分らしさ)になる。
自分を鍛える:モノで鎧を着るのではなく、経験で中身を鍛えるほうが、本当の自信になる。
基準を持って選ぶ:能動的に動くこと、人と共有すること、時間を生み出すことにお金を使う。
深く味わう:体験中はスマホを置き、五感のフィルターを開いて、その瞬間を全力で楽しむ。
このサイトでは、こうした古今東西の知恵を手がかりに、私たちが日々をより幸せに、そして豊かに生きていくための「考え方」や「物事の捉え方」を探求しているよ。
もし、興味があれば、他の記事も覗いてみてくれると嬉しいな。
きっと、新しい発見があるはずだよ。
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